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業界解説

三為契約とは何か - 投資用マンション市場の知られざる実態【前編】

三為契約とは何か - 投資用マンション市場の知られざる実態【前編】のイメージ

よくある質問 (FAQ)

三為契約とは何ですか?

三為契約(第三者のためにする契約)は、売主と買主の間に不動産業者が入り、それぞれと売買契約を結ぶ取引形態です。民法537条~538条に基づく完全に合法な契約形態で、2007年には宅建業法上も明確に認められています。買主は真の売主を知ることができず、元の売買価格も分かりません。正確には「他人物売買」の一種で、業者は物件を所有することなく転売益を得ます。

なぜ投資用マンションで三為契約が多いのですか?

業者にとって資金効率が良いからです。仕入資金をほとんど用意する必要がなく、手付金だけ支払い、買主が見つかってから決済するため、レバレッジを効かせた事業運営が可能です。また、登記費用や不動産取得税も節約でき、在庫リスクもありません。ただし「8割」という数字は業界関係者の間で言われているもので、正確な統計データは公表されていません。

三為契約は違法なのですか?

三為契約は完全に合法です。民法537条~538条に基づく正当な契約形態で、2007年には宅地建物取引業法施行規則も改正され、宅建業法上も明確に認められています。国土交通省も適正な運用のためのルールを整備しています。問題は契約形態ではなく、これを悪用して市場価格より大幅に高く物件を売りつける一部の業者にあります。

港区の高級物件市場と投資用マンション市場の違いは?

港区の超高級物件市場では、売主のプライバシー保護のために情報非公開となりますが、CA締結やネームアップで情報開示されます。また買い手側も弁護士やアドバイザーを伴い、対等な立場で交渉します。一方、投資用マンションの三為契約では、意図的に価格の透明性を失わせ、転売益を隠蔽する目的で使われ、買い手は情報弱者として狙われることが多いです。

三為業者の見分け方はありますか?

売買契約書の特約事項を確認することが重要です。三為契約を用いる場合は「第三者のためにする契約」の特約が記載されているはずです。また、売買契約の締結日より前に契約書のコピーをもらい、内容をしっかり確認することが大切です。三為契約自体は合法ですが、価格の妥当性は必ず自分で検証してください。

前回まで、港区の不動産業界の特殊性について書いてきた。

その中で「水面下で動く本当の高額物件市場」に触れたが、実はもっと深い「情報非公開」の世界がある。

三為契約(第三者のためにする契約)の存在だ。

三為契約とは何か

通常の非公開物件であれば、CA(秘密保持契約)を締結したり、ネームアップ(購入者の実名開示)をすれば情報は開示される。

しかし三為契約では、買主は真の売主を知ることすらできない。

「第三者のためにする契約」を略して「三為(さんため)」と不動産業界では呼ばれているが、正確には「他人物売買」の一種だ。これは民法537条~538条に基づく完全に合法な契約形態であり、2007年には宅地建物取引業法施行規則も改正され、宅建業法上も明確に認められている。

つまり、三為契約自体は何ら違法性のない、正当な取引手法なのだ。

しかし、業者は物件を所有することなく、売主と買主の間に入って転売益を得る。中間業者が転売益を狙い、買主には最終的な売買価格しか見えない。価格の透明性は完全に失われ、買主は取引の全体構造を把握できないまま契約することになる。

投資用マンション市場で多用される理由

不動産業界関係者によると、「特に投資用マンションの取引では、実は8割くらいが三為契約で行われている」とされている。

なぜこれほど三為契約が使われるのか。

理由は単純だ。業者にとって都合が良いからだ。

業者にとってのメリット

  1. 仕入資金が不要

    • 手付金だけ支払い、買主が見つかってから決済
    • レバレッジを効かせた事業運営が可能
  2. 諸費用の節約

    • 所有権移転登記を省略
    • 登録免許税や不動産取得税を節約
  3. 在庫リスクがない

    • 物件を所有しないため、売れ残りリスクなし

港区の超高級物件市場との決定的な違い

ここで、前回まで書いてきた港区の超高級物件市場との違いを考えてみたい。

情報非公開の目的が真逆

港区の超高級物件市場

  • 売主のプライバシー保護が目的
  • CA締結やネームアップで情報開示される
  • 取引の透明性は保たれている
  • 買い手側も弁護士やアドバイザーを伴い、対等な立場で交渉

投資用マンションの三為契約

  • 転売益を隠蔽するのが目的
  • どんな手続きをしても真の売主は分からない
  • 意図的に透明性を失わせている
  • 買い手は情報弱者として狙われることが多い

同じ「情報非公開」でも、その目的と性質が全く異なるのだ。

取引環境の違い(力量差)

港区の超高級物件では、買い手側もCAを締結し、弁護士や不動産アドバイザーを伴って慎重に交渉する。売り手と買い手が対等な立場で、プロ同士の真剣勝負が行われる。

私も会社経営時代から長年の付き合いがある顧問弁護士と契約しており、重要な不動産取引では必ず相談するようにしている。

一方、投資用マンションの三為契約では、買い手の多くは不動産投資の初心者。相場も知らず、シミュレーションもできない。圧倒的な情報格差と経験の差がある中で、業者のペースで契約が進められる。

失われた防波堤 - 宅建業者の本来の役割

ここで重要な構造的問題がある。

経済学で「情報の非対称性」と呼ばれる現象だ。売り手は商品の情報を完全に把握しているが、買い手は限られた情報しか持たない。この格差が、市場の歪みを生む。

本来、宅建業者は素人である買主を守るゲートキーパーの役割を果たすべきだ。もし投資用マンション販売業者とあなたの間に、買主側の代理人として別の宅建業者が入れば、不利な契約になるはずがない。プロ(売主側)対プロ(買主側)の構図になるからだ。

仲介業者は買主の利益を代弁し、契約内容を精査し、価格の妥当性を検証し、リスクを説明する。これが宅建業者の存在意義だ。

しかし三為契約では、この防波堤がない。三為業者が直接買主と契約するため、買主側に専門家がいない。情報の非対称性が解消されないまま、素人対プロの不公平な戦いが行われる。

多くの人は、この基本的な構造すら理解していない。「不動産屋さんが親切に物件を紹介してくれている」と思い込んでいる。しかし、その「不動産屋さん」は売主であり、あなたの味方ではないのだ。

顧客層の違い

港区の超高級物件は、資産家や富裕層が顧客。 彼らは不動産の価値を見極める目を持ち、必要に応じて専門家のサポートを受ける。

一方、投資用マンションの三為契約のターゲットは、副収入を求めるサラリーマンや公務員。 「不労所得」「将来の年金代わり」という甘い言葉に惹かれる人々だ。

三為契約は合法だが…

誤解のないように再度強調しておくと、三為契約自体は完全に合法だ。 国土交通省も三為契約を問題視しているわけではない。むしろ適正な運用のためのルールを整備してきた。

しかし、「合法」と「適正」は違う。

法的に問題がなくても、情報の非対称性を悪用して、初心者から暴利をむさぼる業者が存在する。

問題は三為契約という仕組みそのものではなく、それを悪用する業者にある。透明性のない取引構造を利用して、市場価格より20~30%も高く物件を売りつける。これが倫理的に問題なのだ。

私の経験

実は私も、港区ではない別の23区内の物件で三為契約の話があった。 当時はよくわからなかったのだが、今では不動産屋が利益を取りたかったのだな、と分かる。

幸い、その取引には至らなかったが、もし進めていたら…と思うとゾッとする。


【後編へ続く】

後編では、三為契約が悪用された「かぼちゃの馬車事件」の実態と、銀行の組織的関与、そして不動産投資の本当の闇について詳しく解説します。