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業界解説

かぼちゃの馬車事件と銀行の闇 - 三為契約が悪用される構造【後編】

かぼちゃの馬車事件と銀行の闇 - 三為契約が悪用される構造【後編】のイメージ

よくある質問 (FAQ)

かぼちゃの馬車事件とは何ですか?

2018年に経営破綻したスマートデイズが運営していた女性用シェアハウス投資事業です。三為業者として、サブリース契約で30年間の家賃保証を謳いながら、実際は市場価格より高い物件を販売。スルガ銀行と組織的に結託し、通帳改竄や融資書類の偽造を行い、多くのサラリーマン投資家が借金を背負うことになりました。

スルガ銀行はどのような不正を行ったのですか?

スルガ銀行は組織的に通帳の預金残高を改竄し、融資書類を偽造していました。頭金不要と虚偽の説明を行い、本来融資を受けられない人にも融資を実行。対象オーナー257名、物件数343棟、ローン残高約440億円にのぼり、最終的に被害者たちは累積1570億円の債権放棄を勝ち取りました。金融庁から業務改善命令を受けています。

市場価格の何倍で買わされるのですか?

巧妙なところは、市場価格の1.2~1.3倍という「微妙なライン」で販売されることです。2倍3倍なら明らかに詐欺として裁判で勝てますが、1.2~1.3倍だと「相場の範囲内」「交渉の結果」と言い逃れされます。しかし、投資用不動産で20~30%も高く買わされれば、その時点で投資は失敗です。

銀行は信用できるのですか?

銀行も営利企業です。「銀行は公共性が高く、悪いことはしない」という幻想は危険です。かぼちゃの馬車事件でスルガ銀行が組織的に行った不正融資は、この幻想を打ち砕く事例でした。これらは「一部の悪い行員」の問題ではなく、組織的・構造的な問題です。「銀行が言うなら大丈夫」という思考停止は最も危険です。

なぜ初心者投資家が狙われるのですか?

物件価格の比較や購入後のシミュレーションなどに慣れていない初心者は、相場を知らずに高値で購入してしまいやすいからです。また、「融資が下りる」「銀行が融資するなら安心」という言葉に惑わされやすく、物件の実際の価値を見極める経験も不足しているため、格好のターゲットとなります。

三為契約の何が問題なのですか?

買主は取引の全体構造を把握できず、市場価格の1.2~1.3倍で購入させられることが多いです。これは裁判で「詐欺」と認定されない巧妙なラインですが、投資用不動産で20~30%も高く買えば投資は失敗です。業者の転売利益が上乗せされ、購入時点から実質的なオーバーローンを負わされます。また、金融機関と連携して「融資が下りやすい」と誘導される場合もあります。

現在も未解決の案件はあるのですか?

はい。かぼちゃの馬車のシェアハウスは代物弁済で解決しましたが、アパート・マンションローンについてスルガ銀行は「それぞれ事情が異なる」として一括解決に応じていません。2025年3月末時点で768物件が未解決のまま、個別対応という名目で問題が長期化しています。

【前編より続く】

前編では、三為契約の仕組みと、港区の超高級物件市場との違いについて解説した。

後編では、この三為契約が悪用された実例と、不動産投資の本当の闇について詳しく見ていこう。

かぼちゃの馬車も三為契約だった

2018年に経営破綻した「かぼちゃの馬車(スマートデイズ)」。 多くのサラリーマン投資家が借金を背負うことになった、あの事件だ。

実は、かぼちゃの馬車も三為業者だった。

女性用シェアハウスをサブリース契約で運営するという投資ビジネスだったが、実態は安く仕入れた物件をエンドユーザーに高値で売ることで利益を得ていた。

スルガ銀行との組織的結託

かぼちゃの馬車事件で特に悪質だったのは、スルガ銀行との組織的な結託だ。

  • 通帳の預金残高を改竄
  • 融資書類の偽造
  • 頭金不要と虚偽の説明
  • 建築会社から50%のキックバックを受け取る自転車操業

対象オーナー257名、物件数343棟、ローン残高約440億円。 最終的に被害者たちは累積1570億円の債権放棄を勝ち取ったが、これは氷山の一角に過ぎない。

物件の価値は購入金額よりも大きく下回る物件ばかり。 オーナーが物件を売却しようとしても、ローンの完済ができない。

市場価格の1.2~1.3倍で買わされる巧妙な仕組み

これが巧妙なところだが、市場価格の1.2~1.3倍という「微妙なライン」で販売されることが多い。

2倍3倍なら明らかに詐欺として裁判で勝てるが、1.2~1.3倍だと「相場の範囲内」「交渉の結果」と言い逃れされる。しかし、投資用不動産で20~30%も高く買わされれば、その時点で投資は失敗だ。

当然、投資用ローンの額もこの水増しされた物件価格を基準にするため、購入者は購入した時点から実質的なオーバーローンを負わされることになる。

なぜ初心者が狙われるのか

三為業者の中には、物件価格の比較や購入後のシミュレーションなどに慣れていない初心者を狙う者がいる。

宅建業者と素人の知識差は、J1選手と運動音痴の還暦男性くらいの違いがある。法律、税制、ローン、建築、相場、リスク評価…あらゆる面で圧倒的な差がある。

だから、素人をだますなんて、手のひらを転がすようなものだ。実際「相手を掌で転がして落とすときが快感」と言っていた投資用不動産の営業マンを私は知っている。彼らにとって、素人投資家は「カモ」でしかない。

このような業者は、金融機関とタッグを組むことが多い。 「融資が下りる可能性が高い」「銀行が融資するなら安心」とささやかれて買ってしまい、後で高い買い物だったことに気づくのだ。

銀行への幻想を捨てよ

ここで重要な認識を共有したい。

銀行も営利企業である以上、利益追求のために倫理的にグレーな行為に手を染めることがある。特に日本では「銀行は公共性が高く、悪いことはしない」という幻想が根強い。

かぼちゃの馬車事件でスルガ銀行が組織的に行った不正融資は、この幻想を打ち砕く事例だった。通帳改竄、融資書類の偽造、不動産業者との癒着。これらは「一部の悪い行員」の問題ではなく、組織的・構造的な問題だ。

2025年3月末時点でも、アパート・マンションローンの768物件が未解決のまま。銀行は「個別対応」と言い続けている。

三為契約が投資用マンション市場で多用されている背景には、こうした金融機関と不動産業者の結託がある。

「銀行が言うなら大丈夫」という思考停止は、最も危険な罠なのだ。

スルガ銀行の長い歴史

実はスルガ銀行は、1980年代からリテール融資に特化し、「他行が及び腰となるような投資用物件への融資」を積極的に展開してきた。不動産向けローンでは、建物の耐久年数を大幅に超える長期融資など、リスクの高い融資で知られていた。

かぼちゃの馬車事件は、この「攻めの経営」が行き着いた先の結果とも言える。

金融庁から業務改善命令を受けたが、問題の本質は変わっていない。銀行は利益を追求する営利企業であり、その利益のためなら顧客を犠牲にすることもある。この現実を直視すべきだ。

まとめ

港区の不動産業界を見てきて、「ネットでは辿り着けない世界」があることを知った。

しかし、それは売主のプライバシー保護という正当な理由があってのこと。プロ同士が対等な立場で、慎重に交渉を進める世界だ。

一方、投資用マンションの三為契約は、買主を欺くための「情報隠蔽」だ。

そして、その背後には金融機関の組織的な不正融資がある。「銀行なら安心」という幻想が、被害を拡大させている。

これこそが、本当の意味での「不動産投資の闇」なのかもしれない。

不動産投資を考えている人は、くれぐれも注意してほしい。 特に「融資が下りやすい」「銀行が融資するなら大丈夫」という甘い言葉には要注意だ。

三為契約自体は合法だが、それを悪用する業者と、それに加担する金融機関が存在する。

港区の超高級物件市場のような、プロ同士の真剣勝負の世界とは、全く異なる危険な世界がそこにはある。