trade 16💲リベンジ失敗:お祈りトレードの罠

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。 驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。 たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
有名な平家物語の冒頭は、人生の無常さを説いたものです。 FXの世界も同じで、一瞬にして全てを失うこともある。 しかし、その逆もまた真である。ということは、その逆の逆もまた真と言えよう。
訳の分からぬまま97万円にまで達した残高が一瞬で消え去った初戦。15万円負け。 そして万全を期して臨んだ2度目のチャレンジ。16日間で129万円の利益を達成した。
FXなんてちょろいぜ! これで老後資金は安泰だ!税金の心配しなきゃだな!
バカである。バカである。バカである。
出金できない
早速利益を出金しようとしたが、失敗した。GemForexからは出金の通知の後に、組戻しの通知が届いた。 つまり、受け側の口座で入金が拒否されたということだ。
なぜ?
調べて分かったことは、多くの銀行が実は海外からの送金を受け付けていないということだ。 当時、私は特に何も考えずにソニー銀行を振込先にしていたが、それが原因だった。 海外からの送金に対応している銀行は少なかった。
- 住信SBIネット銀行
- 楽天銀行
これくらいだ。あとは地方銀行で対応しているところがあるようだが、私は使っていない。
しかも、楽天銀行は口座情報をそのまま設定してはだめで、とりあえず本店を指定して、 実際の支店名は別で指定とか、面倒くさいことをやらないといけなかった気がする。
いずれにしても、出金に失敗した。次回の無料出金までは1カ月待たなければならない。 そうしなければ、送金額の5%の手数料がかかる。
私は考えた。
1カ月待つのはいい。だが、その間、お金をただ置いておいてももったいない。 ならこいつを1カ月運用したら5倍くらいになるんじゃないか? そうしたら500万超えだべさ!
2022年6月7日。早速、私は資金100万円を通常口座から取引口座に移動させ、EAをすべて再稼働させた。 ぐふふふふ。儲かったお金を何に使おうかなあ…妄想で胸が膨らむ。
荒れる相場
今回は自己資金のみ。クレジットは消滅している。だが無問題。すぐに増えていくに決まっている…ん?
様子がおかしい。今までと挙動が違うぞ。
積みあがっていくポジション。 膨れ上がっていく含み損。 比例して激減していく証拠金維持率。
3日後の6月10日には50万円を追加投入。合計150万円の資金で取引を続けた。 いやいや、さすがにいつまでも相場は下がらないだろう。EAが計算してナンピンをしているんだ。すぐに戻るはずだ。
そんな願いもむなしく、含み損は膨れ上がっていったまま取引を終えた土曜日の朝。 うん、月曜日になれば相場も回復するだろう。そう信じていた。信じるしかなかった。
お祈りトレード
翌営業日の月曜日が来た。相場はまだまだ下がり続け、ついにいくつかのEAが破綻した。 150万円の資金は、残高が60万円を切った。
だが、相場はまだ下げ止まらない。もうパソコンの画面を見るのがつらい。 ベテランならこのような状況に陥る前にロスカットするだろう。 だが私は違う。初心者だ。ビギナーだ。おまけにビビりでヘタレだ。自分で損切りなんて怖くてできない。 EAにまかせろ、EAを信じるんだ。 だが、そのEAは破綻している。
今の私の出来ることは、たった一つだけ。明日は明るい未来が待っていると信じて、酒をあおって眠ることだ。
そう、これを人は現実逃避と呼ぶ。
そして、トレーダーはこれを「お祈りトレード」と呼ぶのだ。
(続く)