trade21💲証券会社の確率論的罠とナンピンEAの運命的な共通点

📞 とあるアメリカでの逸話
連続で的中する予測電話
ある日、老夫婦に証券会社から電話がかってきた。
「来週、金相場は上がります。」
老夫婦は投資に興味が無く、その電話を無視した。 とはいえ、電話が少し気になったので、念のため相場を確認すると、確かに金は上がっていた。
翌週、再び電話がかかってきた。
「来週、金相場は下がります。」
老夫婦は再び電話を無視したが、相場を確認すると、予想通り金は下がっていた。
その後も電話は続き、老夫婦は無視し続けた。 しかし、相場の動きは毎回証券会社の予測通りだった。 次第に老夫婦は、証券会社の予測精度の高さに心を動かされ始めた。 毎週の金相場チェックが、彼らの楽しみとなっていった。
全財産を賭けた結末
そして10回目の電話。
「来週、金相場は上がります。」
9週連続で的中してきた実績から、老夫婦は確信を持った。 証券会社に全財産の投資を依頼し、相場上昇への期待に胸を膨らませながら、次の週を迎えた。
結果、相場は下落。老夫婦は全財産を失った。
🎯 この逸話のからくりと教訓
マーケティング戦略の真相
証券会社にとって、予測を外すことに利点はない。 彼らの目的は、的確な予測で投資に無関心な人々を引き込み、手数料収入を得ることにある。
では、なぜ証券会社は9週もの間、予測を的中させ続けられたのか? そして、なぜ10週目に外れたのか?
実は、この証券会社は老夫婦以外に、10,000人に同様の電話をかけていた。
確率論から見る仕組み
9週連続で予測が当たる確率は以下の通りである。
- 1/2^9 = 1/512 ≒ 0.2%
- 10,000人に電話をかければ、約20人が9週連続で予測が当たる計算となる
つまり、完全なランダム予測でも、20人ほどの潜在的投資家を獲得できる計算となる。
ただし、この20人の中で次週も予測が当たる確率は50%(1/2)に過ぎない。老夫婦は不運にも、外れを引いてしまったのである。
実際には9週連続でなくても5~6週連続で予測が的中すれば、十分に投資家を引き込むことができるだろう。1/2^6 ≒ 1.6%の確率なので、潜在的投資家は約160人にまで増える。
これは、個人レベルでは奇跡的に見える現象も、マクロの視点では単なる確率論に過ぎないことを示す、証券会社による巧妙なマーケティング戦略の一例である。
いや、その前に、全財産賭けるかなあ。このあたりの雑な投資がアメリカンなのだろうか。若い頃に何かの本で読んだ逸話なので、うろ覚えである。
💰 ナンピンEA作者の戦略
システムの仕組み
EA提供者とGemForex(FX取引業者)の関係性は、次の通りである。
- EAの作者は、開発したEAをGemTradeに提供する。
- GemForexは、EAをミラートレードのストラテジーとしてトレーダーに提供する。
- トレーダーがEAを利用し、取引を行う。
- GemForexはトレーダーの取引量に応じて報酬を作者に支払う
初心者を狙う罠
この関係性において、EAの作者は、GemForexの取引量に応じて報酬を得るため、取引量を増やすことが重要である。 ここからが深い闇だ。
- ミラートレードの利用者はFX初心者トレーダーが多い
- 初心者はFXやEAの知識が乏しいため、見た目のグラフが優秀なEAを選択する
- 初心者が取引する
- しばらくして初心者は破綻するが、EA作者は報酬を、GemForexは手数料を得る
だが、最初は初心者でも、何度か失敗すれば、利益が上がることもある。 しかし、調子に乗るとトレンド相場でやられる。
そこで長期間運用され、コンスタントに収益を上げてきたEAを厳選して運用した。 にもかかわらず、すべてを失った。
なぜなのか?
🔄 ナンピンEAと逸話の共通点
運命の類似性
短期で破綻したEAと長期で破綻したEAの差は何か? EAはポジションオープンに様々な指標を使っている。EAごとにアルゴリズムは異なっている。 私はこれらアルゴリズムがすぐれているEAが長期間運用に耐えるのだと考えていた。
違う、大間違いだ。
その差は「運」だ。 たまたまトレンド相場の初めに逆張りをしなかった。 それが何度か続いただけの話なのだ。
そう。これは最初の話と同じ構図なのだ。
破綻の真実
MyFXBookで確認しても、3年前に人気だったEAはすべて破綻して消滅していた。 GemForexでも、最後の最後で生き残っていたEAが破綻した。運用期間は1年半だった。
それでも工夫すればナンピンは有効なアルゴリズムになるだろうか? ついにEA開発を決めた私は、ナンピンについて検証することにした。 (続く)