AI拡張型開発:一人で実現する大規模システム開発の革命

従来の大規模システム開発では、複数人のチームが必須でした。 担当振り分け、指示出し、レビューなど、多くの工程が発生します。 アジャイル開発のスクラム方式やウォーターフォールモデルがその代表例です。
例えば、10人チームでは、各メンバーに担当を割り当て、スケジュールを調整します。 「次のミーティングはいつか?」「成果物はいつ完成するか?」といった調整が常に必要です。 人間なら、次週のミーティングまでにできる範囲を割り当てますが、それも確実ではありません。
人間は感情と身体を持ち、生活もあります。 仕事に不満や不安があれば相談に乗り、集中できる環境を作ることもマネジメントの一部です。 体調管理や自己管理が不得意な人には、代わりに管理する必要も生じます。 私生活の問題で仕事が滞ることもあります。 そんなとき、誰かと手分けしたり、管理者自身が作業を肩代わりしたり、ステークホルダーにスケジュール調整を要請したりと、様々な対応が必要です。
レビュー時にも配慮が必要です。 特に日本人はディベートが苦手で、間違いの指摘を人格否定と捉えがちです。 ストレートな言い方では感情的になる方が多く、外国人とのやり取りでは逆にストレートな方が理解しやすいという違いもあります。
このようなマネジメントは業務全体の30%~50%を占めると言われています。 開発業務だけで見れば、1+1=2ではなく、1+1=1.5~1.7の効率となります。 人数が増えれば管理コストはさらに増大し、チームが5名以上になればPMは管理だけで手一杯になります。
AI拡張型開発の革命性
AI拡張型開発では、AIにどんどん仕事を任せられます。 成果物は数分で完成し、それをレビューしてAIにフィードバックすると、修正も数分で完了します。 開発者自身はコーディングに専念せず、要件定義と設計に集中し、AIと共同で実装を進めることができます。
AIには感情も身体もないため、人間のようなマネジメントが不要です。 気を使う必要もなくストレートに指示でき、作業を次々と進められます。 音楽のDTMのように「一人オーケストラ」を実現できるのです。 ChatGPT、Claude、GitHub Copilot、ImageFXなど複数のAIを駆使することで、一人でも大規模システムを現実的な時間内で開発可能になりました。 これは私にとって真のパラダイムシフトです。
私の経験とAIの相性
私の経験がAI活用と相性が良いと感じています。 初めて外国人エンジニアと働いたとき、英語が苦手なため必要最低限の内容だけを伝えていました。 しかし、文化も言語もスキルも異なる相手には、短文では意図が伝わりません。 時差の問題もあり、一日一往復のメールでは一週間経っても進展がありませんでした。
ここで「暗黙知」の限界を実感し、2時間かけて辞書を引きながら詳細な指示を英文で書きました。 「これくらい分かるだろう」と省略せず、想定される質問にすべて答える形で記述したのです。 その結果、「分かりました」という簡潔な返信の後に、非常に満足のいくプログラムが届きました。
この経験はAI拡張型開発に通じるものがあります。 何も知らない相手に説明する際のポイントを体感したのです。 以降、コミュニケーションはスムーズになり、10年間一緒に仕事したあるエンジニアとは3回しか対面できませんでしたが、数多くのプロダクトを共同開発できました。
AIによるウォーターフォールモデルの革新
私はウォーターフォールモデルの有用性を認めつつも、バグ修正コストの高さという欠点も感じてきました。 アジャイル開発はその解決策として生まれましたが、これも人を選ぶ手法です。
しかし、AI拡張型開発を用いれば、ウォーターフォールを高速で回すことが可能になります。 これは人間だけでは不可能です。 特に下流工程のバグを上流に反映させるコストが大幅に下がります。 テスト工程でのバグ修正を設計書に反映できない、コードのコメントを修正する余裕がないといった問題も、AIなら正確かつ効率的に解決できます。 これは画期的な進歩だと実感しています。