RAGとは何か? データのチカラを活かすAIの新たなアプローチ【概念編】

先日、スタッフと外部委託先とのやり取りの中で以下のような説明を目にしました。
クライアントの社内研修用のロープレ環境をGPTと連携させたRAGを作ったり、家電メーカーの顧客サポートについてこちらもRAGの構築から行っております。
このフレーズに出てくる「RAG」という言葉。 ふわっとはイメージできるものの、具体的にどういった技術なのか、どのように構築され、どんな価値をもたらすのか、正確な知識を持ち合わせていないことに気づきました。
そこで、RAGについて調査を行い、その概要と特徴をまとめることにしました。
RAGとは何か
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、直訳すると「検索拡張生成」という意味です。 この技術は、生成AIの潜在能力を最大限に引き出すための重要なアプローチとして注目されています。
従来の生成AIは学習済みの知識のみを頼りに回答を生成するため、特定のドメインに関する詳細な知識や、最新の情報を含めることが難しいという課題がありました。 RAGはこの課題を解決するために、外部のデータベースから関連情報を検索し、その情報を基に回答を生成するという方法を採用しています。
RAGの基本的な仕組み
RAGの処理フローは主に以下の3つのステップで構成されています。
- 検索フェーズ:ユーザーの質問に関連する情報を外部データベースから検索します。
- 拡張フェーズ:検索結果をAIへの指示(プロンプト)に追加します。
- 生成フェーズ:拡張された情報を基に、生成AIが回答を作成します。
この一連のプロセスにより、AIは学習データに含まれていない専門的な情報や最新の情報を活用して、より正確で文脈に即した回答を生成することができるようになります。
RAGの主なメリット
RAGの導入によって得られる主なメリットには以下のようなものがあります。
1. ハルシネーション(幻覚)の軽減 生成AIが事実と異なる情報を作り出してしまう「ハルシネーション」の問題を大幅に軽減することができます。 ただし、完全に解決するわけではなく、検索結果の品質やAIモデルの設計に依存する部分が大きいことに注意が必要です。
2. 最新情報へのアクセス AIの学習データは特定の時点までの情報に限られますが、RAGを使えば最新の情報をリアルタイムで活用することが可能になります。
3. 企業固有の知識の活用 社内文書やマニュアル、FAQなど、企業固有の知識を生成AIと連携させることで、組織特有の文脈を踏まえた回答が可能になります。
4. 追加学習なしでの知識拡張 AIモデル自体を再トレーニングすることなく、外部データソースを更新するだけで知識を拡張できるため、運用コストを抑えることができます。ただし、外部データの品質やフォーマットが適切でない場合、誤った情報を生成するリスクがあります。
最新のRAG技術動向
RAG技術は急速に進化しており、2025年に向けていくつかの重要なトレンドが見られます:
1. リアルタイムRAG 動的なデータフィードとRAGモデルを統合し、最新情報をリアルタイムで取得・活用する技術が発展しています。外部知識ベース、ウェブサイト、構造化データソースとの接続を確立することで、生成AIソリューションがより正確で文脈に適した内容を提供できるようになっています。
2. ハイブリッド検索技術 密ベクトル(意味的類似性を捉える)と疎ベクトル(キーワード検索など)の両方の検索手法を組み合わせたハイブリッド検索が注目されています。クエリの複雑さに応じて動的に手法を切り替えることで、計算コストを削減しながら精度を維持する取り組みが進んでいます。顧客サポートシステムでは、この手法により応答時間が40%短縮された事例もあります。
3. マルチモーダルRAG テキストだけでなく、画像、音声、動画など複数のモダリティを統合したRAGシステムが開発されています。これにより、より豊かな文脈理解と情報検索が可能になっています。
4. 自己検索(Self-Retrieval)機能 複雑な質問を自動的に小さな、より焦点を絞った検索に分解する「自己クエリRAG」の開発が進んでいます。これにより、難しい問題を分割して効率的に解決するアプローチが可能になっています。
5. GraphRAG 知識グラフを活用して文書検索と応答生成を強化する新しいRAGフレームワークが登場しています。これは特に大規模組織での意思決定や、教育分野での複雑なトピックの関連性を理解するのに役立っています。
以上が、RAGの基本的な概念と最新の技術動向についての概要です。次回の「導入編」では、実際の実装方法や課題、企業の導入事例などについて詳細に解説します。
Cloudflare AutoRAG: RAG構築の簡素化
2025年4月、Cloudflareは「AutoRAG」という完全管理型のRAGパイプラインを発表しました。このサービスは、RAGシステムの構築と運用の複雑さを大幅に軽減することを目的としています。
AutoRAGの主な特徴:
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インフラ管理不要: データの取り込みからベクトル化、検索、応答生成までのプロセスを自動化し、開発者はインフラ管理から解放されます。
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簡単なセットアップ: わずか数クリックで完全なRAGパイプラインを構築できます。R2バケットにデータをアップロードするだけで、残りはAutoRAGが処理します。
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継続的な更新: データソースを常に監視し、インデックスを自動的に更新することで、AIが常に最新の情報を基に回答を生成できます。
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カスタマイズ可能: Workers AIモデルの選択、チャンキング戦略の設定、システムプロンプトの編集など、様々なカスタマイズが可能です。
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グローバルネットワーク: Cloudflareのグローバルネットワーク上で動作するため、世界中どこからでも低レイテンシでアクセスできます。
AutoRAGは現在オープンベータ段階で、R2ストレージとの統合が可能です。今後は、ウェブサイトURLの直接解析やCloudflare D1などの構造化データソースとの統合も計画されています。
現在、autoRAGと日々格闘しています…