オフショア開発の現実とAI時代の新たな可能性
よくある質問 (FAQ)
オフショア開発で発見された300行の重複コードの問題は?
オフショア開発者の技術力はどうだったのか?
オフショア開発者が設計原則を軽視する具体的な例は?
なぜオフショア開発者はAIツールを使わないのか?
AI拡張型開発とオフショア開発のコスト比較は?
オフショア開発の構造的問題とは?
オフショア開発で発見された数々の品質問題。 今回は、その背景にある構造的な問題と、AI時代における開発パートナー選定について考察します。
300行の重複コードが教えてくれたこと
先日、 ベトナムのオフショア開発会社から納品されたコードをレビューする機会がありました。 そのコードには興味深い特徴がありました。 機能の似ている二つのパッケージで全く同じロジックが実装され、 300行以上のコードが完全に重複していたのです。 まるで試行錯誤の跡が、 そのまま残されているようでした。
このようなコードを見るのは今回が初めてではありません。 私自身これまで複数のオフショア開発に関わってきましたが、 同様の構造的な問題に繰り返し直面してきました。 加えて、 業界関係者のレビューや顧客満足度調査からも、 こうした課題は個別の事例にとどまらず、 オフショア開発全般に広く存在していることが確認されています。
マジックナンバーのハードコーディング、 エラーハンドリングの欠如、 本番環境に残されたデバッグ用のprint文、 コメントに混在する日本語・英語・ベトナム語…。 もはや国際会議さながらのソースコードに出会うことも、 珍しくはありません。
勉強はできるが、エンジニアリングを知らない
こうしたコードを書いたプログラマーの技術力が低いわけではありません。 最新の非同期処理技術を使いこなし、 並列処理を導入し、 モダンな言語機能も活用しています。 アルゴリズム的な思考力は十分に備えています。
問題は、 実務上の判断力です。 基本的な設計原則が軽視されています。
- 同じコードを何度も書くDRY原則の違反(Don’t Repeat Yourselfの略で、「同じことを繰り返すな」という意味です)
- 関数は責任の分離ができていない。(一つの機能は一つの仕事だけをすべきという原則)
- 設定値は全てコード内に直接書き込まれています。(設定値は外部化するべき)
彼らは完璧主義的で、 あらゆるパターンに対応しようと複雑なロジックを組み上げます。 技術的には先進的であっても、 設計思想や保守性への意識が育っていないのです。
言い換えると、料理の腕は超一流なのに、衛生管理が全くできていない料理人のようなものです。 どれだけ美味しい料理を作れても、いつか必ず食中毒が発生し、信頼も信用も失います。
なぜAIを使わないのか
私が最も驚いたのは、 この開発者がAIツールを使っていなかった点です。 現代のAIツールは、 重複コードの統合、 設定値の外部化、 関数の分割といったベストプラクティスを数分で提案してくれます。 このような“汚れたコード”は、 AIの助けを借りれば相当数回避できるはずです。
おそらく、 オフショア企業側では「AIはコストがかかる」と誤解されているのかもしれません。 しかし、 必要なのは「AI駆動開発」ではなく「AI拡張型開発」です。 これはAIを主役にするのではなく、 人間のエンジニアがAIを補助ツールとして活用し、 自らの能力を拡張するという発想です。 コストは最小限で、 品質と生産性は飛躍的に向上します。
AIは魔法の杖ではありませんが、 正しく使えば、 経験不足を補い、 ベストプラクティスを学び、 コードの問題点を客観的に指摘してくれる優秀なパートナーになります。
このプロジェクトは数名のオフショアチームで8カ月かかりました。 コードはコメントもなく、保守性は皆無です。 この汚いコードはロジックもぐちゃぐちゃで、 メモリリークや同期非同期の混在によるデッドロックの危険性もあります。 でも、クライアントはこのシステムを使うより、他に方法がありません。
私ならおそらく、AIを使って、ドキュメントも込みで、 もっと保守性に優れたプログラムを、一人で2カ月かからず作れると思います。 オフショア開発の「安いが低品質」モデルは、 AI拡張型開発の登場で完全に時代遅れになっています。 品質・速度・コストのすべてでAI活用が圧倒的に優位です。
エンジニアの使い捨て構造
このような実情を目にして思うのは、 エンジニアが使い捨ての駒として扱われている構造が、 ベトナムを含む多くのオフショア現場で見受けられるということです。
若手プログラマーは、 指導者もなく、 AIツールへのアクセスもないまま、 納期に追われてコードを量産させられる。 やがて燃え尽きて業界を去る――。 このような搾取的な構造が、 エンジニア本人にも、 提供されるソフトウェア品質にも、 長期的に悪影響を及ぼしています。
一筋の光明
それでも私は、 希望を感じています。 実際、 ベトナムのエンジニアたちは論理的思考に優れ、 新しい技術への適応力も高い。 彼らが正しい設計原則を学び、 AIツールを自由に使えるようになれば、 現地の技術力は飛躍的に伸びるはずです。
問題は個人の能力ではありません。 問題は「構造」にあります。 オフショア企業がエンジニアを人件費としてしか扱わない限り、 この状況は変わりません。 逆にいえば、 組織としての視点が変われば、 大きな可能性が開けるということでもあります。
技術の進歩により、 経験の浅いエンジニアでも、 AIの補助を得ることで高品質なコードが書ける時代になりました。 この変化が、 オフショア開発における構造的な問題を乗り越えるきっかけとなることを願ってやみません。 若いエンジニアたちが単なる「コーディングマシン」ではなく、 本物のエンジニアとして成長できる環境が、 一日も早く整うことを強く望んでいます。